- 岩本貴志
「続、カイツブリ観察日記」17、試練の雨
最終更新: 2020年11月13日
このブログでは、2018年に東京、井の頭公園で繁殖したカイツブリの子育ての様子を、写真と共に紹介しています。

孵ったばかりの雛は兄弟たちよりものすごく小さい
前回のブログに引き続き、弁天池のカイツブリを取り上げます。
■
カイツブリの親鳥は、オスメス交代でヒナを巣で守る。
1羽が巣でヒナを守っている間、1羽は餌を捕りに出かける。
出かけている親鳥は、ヒナたちのために忙しく餌を運んでこなければならない。
卵が孵る前、卵を温めていたときは巣にいる親鳥は相方が帰って来ると、「待ってました!」と喜んで出かけていた。
その時と比べ、ヒナが孵ってからは「仕方ないな、行くか、よっこらしょ、」とでも言っているようで重い腰がなかなか上がらない。
その、親鳥の交代の時に、巣の上の卵の様子やヒナ様子が見られる。
上の写真は親鳥交代の時の様子。
いちばん手前にいるヒナは、今朝(15日)孵ったばかり。
どうも元気が無いしくちばしの色も悪い。
しばらく親鳥の羽の中に入る事が出来ず、体が冷えて体力が奪われてしまったようだ。
どうにかエサを食べて元気になって欲しいが。

4羽のヒナは元気にエサをせがむのに、生まれたばかりの小さなヒナが見当たらない。
4羽の兄弟は食欲旺盛。
親鳥が帰って来るたびに、我先にと一生懸命餌をねだる。
最後に産まれた小さなヒナは、親鳥が餌を運んできても姿を現さない。
食欲も無くなってしまっている。
「食べないと元気が出ないよ!」
雨が強くなったので一時撤退、雨宿りをしなが水生物園ファミリーを見る事に。
水生物園ファミリーのカイツブリが見当たらない、どこかに出かけているのかな?
以前の場所に巣は無くなっている。
雨で池の水かさが増し、水面下から生える葦では対応出来なかったと見られる。
巣は沈んでしまったようだ。
大丈夫だろうか?

巣が無くなってしまった。アシでは水かさの変動に対応出来なかったのかな?
巣が無くなって、ヒナたちの姿が見えなくなると、ヒナが5羽孵った巣がここにあった事が夢のようで、寂しさを感じる。
ヒナたちはどこに行ったのだろう?
巣が無くなってしまって、小さなヒナたちは生きていけるのだろうか?
小さすぎるので、きっとまだ無理そうに思える。

しばらくすると親鳥が現れた。でも雛の姿が見当たらない。6月15日
しばらくすると親鳥が現れた。
でも、ヒナの姿が見当たらない。
ヒナを育てるのを放棄してしまったのだろうか?
それとも巣が無くなってしまったのでおぼれて死んでしまったのだろうか?
しばらくすると、見えないところからヒナの声が聞こえた。
エサをせがむ声だ、1羽か2羽かは分からないがヒナはまだ生きている。
でも親鳥はヒナの方へは行かなかった。
雨も小降りになったので、弁天池に戻ってみると、

親鳥は聞きなれない、かん高い声で鳴いている
親鳥は池の上で移動しないでしきりに何か、すぐ目の前のものを見ている。
そして、聞きなれない甲高い声で鳴いている。
よく見ると近くに、まだうごめいている物体。

動いていた物体はヒナだった!
親鳥はどうにかヒナを助けようと、登り易いように背中を向けるが雛に親の背中に登れるような体力は残っていない。
ヒナは何とか顔を出して呼吸するのが精一杯。
見る見る弱っていくヒナ、なすすべの無い親鳥は首を伸ばして悲しい声を発するばかり。
見ていて悲しくなってしまう。
何度も何度も頭を上げ、呼吸をした後、ヒナは力尽きてしまった。

動かなくなったヒナをじっと見つめる親鳥、この後もしばらくの間、助けようとしていた
動かなくなってもしばらくの間、ヒナに寄り添い、何度も背中を向け、ヒナが登りやすい体勢をとる。
ヒナが動かなくなってから数十分の間、親鳥はヒナの近くに寄り添い、離れる事は無かった。
恵みをもたらす雨も、雛にとっては非常に過酷な試練をもたらす事になってしまった。
去年も今年も雨は雛たちにとって大敵だった。
巣の上も水びだし、体が小さく、羽毛の防水も完全でないヒナたちにとって雨は、大きな試練のようだ。
大人になるまで成長するためには、多くの試練を乗り越えていかなければならない。

雨の降りしきる中、卵を温める親鳥。雨が止む事を願ってるのかな?
つづく ■
前の記事
次の記事